「とめどない憎悪はどこへ」



例えば
あの人を傷つけることが出来れば
この怒りは収まるだろうか


なじり、殴り、唾をかけ、
お前のせいだと罵り、責める


あの顔が苦痛に歪むのを見たかった
この手に彼の血を受け
彼の愛するものを粉々に壊す
深い慟哭を聞き
彼の胸底に決定的な闇を作り出せれば
この震えるほどの痛みも和らぐだろうか


宿主を喰らい尽くすほど増殖する闇
未来をゆだねたその人の
亡骸を抱いた感触が蘇る
あの時あの瞬間の絶望を
憎しみに代えなければ生きてなどいかれなかった


どれだけ享受すれば開放されるのだろう
血に満ちた報復の連鎖から
眠れず悪夢に飛び起きる夜の淵の底から
見捨てた仲間の後ろ姿の残像から


ああすべて
すべて終わらせよう
もううんざりだ
あの人にとっても自分にとっても
これが行き着く道で
そこに行かねばならぬのだ
あの日を境に痺れ続けている頭でそんなことを考えた


引き金に指を掛ける
錆びれた鋼のように軋む音がする
何故泣くのだと同志に問われても
一言で表す答えなど見つからない
彼らへの報復の達成感はただ虚しく
師とかつて夢見た未来への輝きは目を開けられぬほど、眩しい──