「郷愁」


故郷という概念は
普通生まれた土地に生じるものなのだろうに

時折訪れる胸が潰れそうな郷愁感
広がる風景に目を凝らしてやり過ごした

壊れた欠片を接ぎ合わせて
日々の回想を繰り返す
大切なものだから
絶えずそうしていないと消えてしまいそうで逃げてしまいそうで
怖くて

時を知らす鐘が鳴って空気が震えた
その振動を深く吸い込む

誰も真実を知らないことが
もどかしく
時に誰彼構わず叫びたい思いに駆られる
彼らはここで生きたのだ
確かにここで生きていたのだと

過ぎ去ったあの時代が自分の故郷
静止した残像が今もあちこちにあって
拾い再生するのは自分しかいないから

今年もまた櫻が咲いた
ここを去る決心がつかないままの自分に
あやすような花弁が降り注ぐ




(2005年2月)